25行のRFP -思い込みに消えた顧客の要件-

どうも、ozです。
今回はまた結構昔話ですが、某ERPパッケージを担いでいた頃の提案の話です。

飛び込み営業

当時いた会社は、規模はそこそこ大きかったものの、営業に対する考え方がかなりアナログな会社で、営業は既存の主要顧客である大手システム会社への訪問か、それ以外は自分でテレアポなり飛び込みなりでエンドユーザーを見つけてくると言うスタイルだった。※ほとんど見つからないのですが…
その時も午後からイヤイヤ飛び込み営業をしていて、とある化学系の会社に飛び込んだ時に、「お、ちょうど良いところにきた」と迎えてくれる稀有な方に出会った。

5社競合

聞けば、M&Aの関係で親会社のシステムがSAP R/3にかわり、それとのデータの連携が必要になるとのことで、現行システムがかなり古いのでこの際入れ替えてしまえと言うことのようだった。
ただ、このお会いした方がもともとエンジニアで、現行のシステムの開発に大きく関わったらしく、現行システムに対する愛情がすごいことはすぐにわかった。下手に現行システムのここがダメで…等と言うと機嫌を損ねてしまいそうで、発言には気を使いそうだ。私が訪問した時点ですでに何社かには声をかけていたらしく、I社、N社、F社、中堅ソフトハウス、それから自社の5社競合とのこと。超大手を含むとんでもない面々の中に放り込まれた。

RFP

後日、RFPを渡したいと言うことだったので、上司とSEを連れて再度訪問した。
渡されたRFPはパワーポイントにして5ページ。各ページ5行の箇条書きだった。
元SEである上司はあきらかに動揺している。え?これでどうやって提案するの?と言わんばかりの表情だ。その日は一旦そのRFPを会社に持ち帰った(帰社途中、喫茶店で上司がだいぶ悪態をついたのはこの際ふせておく)が結局、再度説明会の実施をお客様にお願いすることになった。

テープ起こしと打合せ

説明会はある程度事前に決めていた質問を行っていくと言う形式になったが、お客様のシステムに対する愛情が噴出し、実に2時間半におよぶ長丁場になった。まだまだ若手のペーペー営業だった私は会話をノートに書き留めるのに必死。念のために録音しておいたので、帰社後はその録音を文字に起こすことにした。
ところがこの文字起こしと言う作業、やってみるとかなり大変。音質が悪かったこともあり、2時間半の会議を文字に起こし終えたのは、日曜日を丸々出勤して夜の9時をまわったころだった。けれどこの作業により、何度も繰り返して会話を聞き直すので、ユーザーにとっての優先順位が分かったことと、一部の要件を上司とSEが勘違いしていることも分かった。

提案書の作成

いよいよ提案書の作成を移っていくのだが、実はこの時に担いでいたERPには標準の提案書と言うのがあった。テンプレートとして使用するためのもので、それぞれのユーザーの要件を必ずしも満たすものではない。当然、前もってテープ起こしをしていた私には、ユーザーが特に重要視していること、上司とSEが勘違いしていることが、だいたい分かっていた。しかし、それを提案に盛り込むには、気づいていなかった最大の壁を乗り越えなければならなかった。
上司とSEのプライドだ。
テープを書き起こした文章はワードにびっしり数ページに渡り、一部聞き取れない部分があったために、非常に読みづらいものになっていた。そのため、ここでユーザーさんがこう言っていた…などと説明しても、テープ起こしの文章を通して読むこともなく、私の意見が取り入れられることもなかった。と言うか、ペーペー営業である私はむしろ怒られて意気消沈した。
結局、100ページ近くに渡る標準のテンプレート提案書から、特にユーザーのニーズに近いものを抜粋し、補足する形で提案することになった。それは、アドオンを最小化し、超大手に対して価格的な強みを活かそうと言う戦術とも合致したためでもある。

提案

最終提案はユーザーが来社するという形になった。発注する企業を見ておきたいと言うことのようだった。提案・デモ用の部屋などを持たない自社はいつもの会議室で行ったのだが、超大手に対して印象の不利は免れない。デモに入り、先方が気にかけていた機能についての質問が飛ぶ。元々勘違いや思い込みが多かったため、ここで少々混乱があったものの、何とか乗り切った。最後の価格のところでは、やはり他社を出し抜いたのか、ユーザーさんの表情が明るいのが見て取れた。
営業として不満の残る提案ではあったが、とりあえずやりきった。やったのはほぼ上司とSEですが、一応。

結果

後日、ユーザーに呼び出されて結果を聞かされた。
5社中4位の評価。価格だけが群を抜き、その他の評価は低かった。
アドオンとなる機能の評価が特に悪く、逆にそこが強かった提案に決めたとのことだった。

社内の立場によって、強く発言できなかったり、言っても却下されたりすることがあるのは、組織人としてある程度仕方がないのかもしれない。
だが、(これは驕りかもしれないが)自分がもっとちゃんと発言していれば、もう少し戦えたかもしれないと思うと、残念で仕方がない。自分に対して。

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